11.『鹿の王』 – 上橋菜穂子
『鹿の王』は、強大な帝国「東乎瑠(ツオル)」に侵略されたアカファ王国を舞台にした物語です。主人公のヴァンは、かつて「独角(どっかく)」という戦士団のリーダーでしたが、戦いに敗れて奴隷として岩塩鉱で働かされていました。
ある日、岩塩鉱が謎の病気を持つ山犬に襲われ、ヴァン以外の奴隷や看守たちは全員病気で倒れてしまいます。ヴァンも病気にかかりますが、奇跡的に回復し、同じく生き残った幼い少女ユナと共に脱出します。
一方、東乎瑠の天才医術者ホッサルは、この謎の病気「黒狼熱(ミッツアル)」の調査を始めます。黒狼熱はかつてオタワル王国を滅ぼした恐ろしい病気で、ホッサルはその治療法を見つけるためにヴァンを追い始めます。
ヴァンとユナは、逃亡の途中で出会った若者トマの村に身を寄せ、飛鹿(ピユイカ)という動物を扱う技術を教えながら新しい生活を始めます。しかし、黒狼熱の脅威は依然として続いており、ヴァンとホッサルはそれぞれの立場から病気の謎を解明しようと奮闘します。
物語は、ヴァンとホッサルという異なる立場の二人の視点で進行し、彼らの成長や友情、そして困難に立ち向かう姿が描かれています。『鹿の王』は、冒険とファンタジーが融合した壮大な物語で、中学生にも親しみやすい内容となっています。
12.『5分後に意外な結末』 – 桃戸ハル
『5分後に意外な結末』は、短い時間で読めるショート・ショート集です。各話はたった5分で読める長さで、最後には必ず驚きの結末が待っています。物語のジャンルは多岐にわたり、笑いあり、感動あり、ホラーありと、どれも個性的で楽しめます。
例えば、ある話では、普通の高校生が突然スーパーヒーローになるという展開が描かれています。彼は学校でいじめられていましたが、ある日、不思議な力を手に入れ、いじめっ子たちを懲らしめます。しかし、最後にはその力が実は夢だったというオチが待っています。
また、別の話では、家族の絆がテーマになっています。ある家族がキャンプに出かけ、そこで様々なトラブルに見舞われますが、最後には家族全員が協力して問題を解決し、絆が深まるという感動的な結末です。
さらに、ホラー要素の強い話もあります。ある少女が古い屋敷に引っ越し、そこで幽霊と出会います。最初は怖がっていた少女ですが、幽霊の正体が実は自分の祖先であり、家族を守るために現れたことがわかります。この話も最後には心温まる結末が待っています。
『5分後に意外な結末』は、どの話も短くて読みやすく、最後に驚きがあるので、中学生にも親しみやすい作品です。朝の読書時間やちょっとした休憩時間にぴったりで、どこから読んでも楽しめます。
13.『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』 – スターツ出版文庫
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』は、現代の中学生・加納百合が主人公の物語です。百合は学校や家での生活にイライラしていて、ある日、母親とケンカして家を飛び出します。裏山の防空壕で一夜を過ごした百合が目を覚ますと、なんとそこは70年前の戦時中の日本でした。
百合は偶然出会った青年・佐久間彰に助けられ、彼と過ごすうちに彼の優しさに惹かれていきます。しかし、彰は特攻隊員で、命を懸けて戦地に飛び立つ運命にあります。百合は現代に戻る方法を探しながらも、次第に彰との別れが近づいていることに気づきます。
ある日、百合は戦災孤児の男の子を助けようとして警官に殴られますが、彰とツルという女性に助けられます。百合は戦争の悲惨さを目の当たりにし、彰に特攻に行かないように頼みますが、彼の決意は固いものでした。
最後に、百合は彰に自分の気持ちを伝え、彼も百合を抱きしめます。特攻機に乗り込む前、彰は百合に花を投げ、それを受け取った百合は現代に戻ります。現代に戻った百合は、戦争の記憶を胸に、未来を生きる決意を新たにします。
この物語は、戦争の悲惨さと人々の絆を描いた感動的な作品です。
14.『こちらあみ子』 – 今村夏子
『こちらあみ子』は、ちょっと変わった女の子、あみ子の物語です。あみ子は、優しいお父さん、書道教室を開いているお母さん、そしてお兄ちゃんと一緒に暮らしています。あみ子は正直で純粋な性格ですが、そのせいで周りの人たちから少し距離を置かれることもあります。
あみ子は、同じ書道教室に通うのり君に恋心を抱いていますが、なかなかうまくいきません。ある日、あみ子のお母さんが赤ちゃんを産む予定でしたが、赤ちゃんは生まれてこなかったため、お母さんはとても悲しみます。あみ子はお母さんを元気づけようと、弟のお墓を作りますが、それが逆にお母さんをさらに悲しませてしまいます。
その後、お兄ちゃんは不良になり、お母さんは書道教室をやめてしまいます。あみ子は中学校に進学しますが、家族の問題や周りの人たちとの関係に悩みながらも、一生懸命に生きていきます。
ある日、あみ子はトランシーバーで「こちらあみ子、応答せよ」と呼びかけますが、返事はありません。そんな中、お兄ちゃんが「田中先輩」として恐れられていることを知り、家族の中での変化を感じます。
最終的に、あみ子は祖母の家に引っ越すことになりますが、家族との絆や周りの人たちとの関係を大切にしながら、新しい生活を始めます。この物語は、あみ子の純粋さと成長を描いた感動的な作品です。
15.『余命3000文字』 – 小林泰三
『余命3000文字』は、ある日突然、医者から「あなたの余命はあと3000文字です」と宣告された男の物語です。普通の人なら「余命○○日」と言われるところを、彼は「文字数」で余命を告げられます。これからの人生で使える言葉が3000文字しかないという状況に、彼はどう向き合うのでしょうか?
最初は戸惑いながらも、彼は残りの文字数を大切に使おうと決意します。家族や友人との会話も、無駄な言葉を省いて本当に伝えたいことだけを話すようになります。そんな中で、彼は自分の人生を振り返り、これまでの生き方を見つめ直します。
彼は、これまで気づかなかった小さな幸せや大切な人々の存在に改めて感謝するようになります。そして、限られた文字数の中で、どうやって自分の思いを伝えるかを真剣に考えるようになります。
物語のクライマックスでは、彼が最も大切にしている人に向けて、最後の文字を使って手紙を書きます。その手紙には、彼の感謝の気持ちや愛情が詰まっており、読む人の心を深く打ちます。
『余命3000文字』は、言葉の大切さや人生の意味を考えさせられる感動的な作品です。限られた時間の中で、どれだけ自分の思いを伝えられるかをテーマにしており、読者に深い感動を与えます。
16.『ペンギン・ハイウェイ』 – 森見登美彦
『ペンギン・ハイウェイ』は、小学4年生のアオヤマ君が主人公の物語です。アオヤマ君はとても賢くて、毎日ノートに学んだことを記録しています。ある日、彼の住む街に突然ペンギンが現れます。海もない住宅地にペンギンが現れるなんて不思議ですよね。
アオヤマ君は、この謎を解明しようと決意します。彼は歯医者のお姉さんと仲良しで、お姉さんもアオヤマ君をかわいがっています。ある日、お姉さんが投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃したアオヤマ君は、お姉さんがこの不思議な出来事に関わっていることに気づきます。
さらに、アオヤマ君は森の奥で透明な大きな球体を発見します。この球体とペンギンの出現には何か関係があると考え、彼は研究を続けます。お姉さんは他にもコウモリやシロナガスクジラを出すことができ、その謎はますます深まります。
アオヤマ君は友達のウチダ君やハマモトさんと一緒に、この謎を解明しようとします。彼らは「ペンギン・ハイウェイ」と名付けたルートを辿りながら、次々と新しい発見をしていきます。アオヤマ君は、お姉さんの体調と球体の動きが連動していることに気づきます。
物語のクライマックスでは、アオヤマ君とお姉さんが大量のペンギンと共に球体の中に入ります。お姉さんの正体は最後まで謎のままですが、アオヤマ君はその謎を解くことを誓い、お姉さんに再び会うことを約束します。
『ペンギン・ハイウェイ』は、少年の冒険と成長、そして不思議な出来事が交錯する感動的な物語です。
17.『退出ゲーム』 – 初野晴
『退出ゲーム』は、高校生の穂村チカと上条ハルタが主人公の青春ミステリーです。二人は幼なじみで、同じ高校の吹奏楽部に所属しています。チカはフルート奏者で、ハルタはホルン奏者です。彼らの目標は、吹奏楽の甲子園とも呼ばれる「普門館」に出場することです。
しかし、彼らの吹奏楽部は廃部寸前の弱小部です。部員を増やすために、二人は新入部員を勧誘しながら、校内で起こる様々な謎を解決していきます。例えば、化学部から盗まれた劇薬の行方や、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決など、次々と難題が降りかかります。
チカとハルタは、持ち前の推理力と行動力でこれらの謎を解決し、新しい部員を獲得していきます。特に、音楽エリートの芹澤直子を入部させるために奮闘する姿が描かれています。芹澤は最初、二人の誘いを断り続けますが、彼らの熱意と努力に心を動かされ、最終的には入部を決意します。
物語の中で、チカとハルタの友情や、部員たちとの絆が深まっていく様子が描かれています。また、彼らが直面する問題や困難を乗り越える姿が、読者に勇気と感動を与えます。『退出ゲーム』は、青春とミステリーが絶妙に組み合わさった作品で、読者を引き込む魅力があります。
この物語は、ミステリー好きな中学生にも楽しめる内容で、チカとハルタの掛け合いや、校内での冒険がワクワクさせてくれます。彼らの成長や友情を通じて、大切なことを学べる一冊です。
18.『告白』 – 湊かなえ
『告白』は、ある中学校の女性教師、森口悠子が主人公の物語です。物語は、彼女が終業式の日にクラスの生徒たちに向けて行った衝撃的な告白から始まります。森口先生は、自分の娘がクラスの誰かに殺されたことを告白します。
娘の愛美は、学校のプールで溺れて亡くなりましたが、森口先生はそれが事故ではなく、クラスの生徒による殺人だと確信しています。彼女は犯人の名前を明かさずに、クラス全体に対してその事実を告げます。この告白をきっかけに、クラスの雰囲気は一変し、緊張感が漂います。
物語は、森口先生の告白を中心に進行し、次第に事件の真相が明らかになっていきます。犯人は二人の生徒で、それぞれの視点から事件の経緯や動機が語られます。彼らの心の中には、嫉妬や憎しみ、孤独など、複雑な感情が渦巻いています。
森口先生は、娘の死をきっかけに復讐を決意し、犯人たちに対して巧妙な罠を仕掛けます。彼女の計画は、犯人たちの心に深い傷を残し、彼らの人生を大きく変えることになります。
『告白』は、復讐と贖罪、そして人間の心の闇を描いた作品です。物語の中で、登場人物たちの心の葛藤や成長が描かれ、読者に深い感動を与えます。中学生にも理解しやすいように、シンプルな言葉で描かれたこの物語は、読者に考えさせられるテーマを提供します。
19.『また、同じ夢を見ていた』 – 住野よる
『また、同じ夢を見ていた』は、小学生の女の子、奈ノ花(なのか)が主人公の物語です。奈ノ花は「幸せとは何か?」という国語の宿題に取り組むため、いろいろな人に会って話を聞きます。
まず、奈ノ花は草むらで出会った猫を「彼女」と呼び、友達のように接します。次に、リストカットを繰り返す女子高生の南さん、アバズレと呼ばれる女性、そして一人暮らしのおばあちゃんと出会います。彼女たちはそれぞれ、奈ノ花に「幸せとは何か」を教えてくれます。
南さんは、両親と仲直りできなかったことを後悔していることを話し、奈ノ花に「今すぐにでも親と仲直りするべきだ」とアドバイスします。アバズレさんは、「誰とも関わらずに生きるのはダメだ」と言い、人との関わりが大切だと教えます。おばあちゃんは、「幸せとは、自分がここにいていいと認めてもらうことだ」と語ります。
奈ノ花は、これらのアドバイスを受けて、自分なりの「幸せとは何か」を見つけていきます。彼女は、両親と仲直りし、友達との関係を修復し、少しずつ成長していきます。
物語の最後で、奈ノ花は「幸せとは、ここに今、お父さんとお母さんがいてくれることです」と発表します。彼女は、南さんやアバズレさん、おばあちゃんが実は未来の自分であり、彼女たちのアドバイスが自分の人生を幸せに導いてくれたことに気づきます。
『また、同じ夢を見ていた』は、奈ノ花の成長と幸せを探す旅を描いた感動的な物語です。
20.『銀河鉄道の夜』 – 宮沢賢治
『銀河鉄道の夜』は、孤独な少年ジョバンニが主人公の物語です。ジョバンニは学校に通いながら、病気の母親を助けるために働いています。友達のカムパネルラとも最近はあまり遊ばなくなり、寂しい日々を過ごしています。
ある夜、ジョバンニは「ケンタウル祭り」の夜に一人で丘に登り、星空を見上げていました。すると、突然銀河鉄道という不思議な列車に乗っていることに気づきます。驚いたことに、カムパネルラも同じ列車に乗っていました。
二人は銀河鉄道に乗って、星々を巡る冒険の旅に出ます。途中で出会う人々や風景は、どれも幻想的で美しいものばかりです。例えば、鳥を捕る人や、氷山にぶつかって沈んだ船から来た姉弟など、さまざまな人々と出会います。
旅の中で、ジョバンニは「本当の幸せとは何か?」を考えるようになります。カムパネルラと一緒に旅を続けたいと願うジョバンニですが、旅の終わりが近づくにつれて、カムパネルラがいなくなってしまいます。
ジョバンニが目を覚ますと、現実の世界に戻っていました。彼は、カムパネルラが川で溺れて亡くなったことを知り、深い悲しみに包まれます。しかし、この旅を通じてジョバンニは「本当の幸せとは何か」を見つけることができました。
『銀河鉄道の夜』は、友情や自己犠牲、そして本当の幸せについて考えさせられる感動的な物語です。
以上、【高校受験】国語力を身に着けるために中学生のうちに読んでおくべき小説20選でした。

では、また~
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