仕事中や勉強中、YouTube の BGM ではちょっと物足りない、
かと言って初めてのドラマではガッツリと見てしまう。
そんな時、端蔵は何度も見て内容を知っているドラマを BGM 代わりに流しています。
今回のおすすめは「ふぞろいの林檎たち」です。
パートⅠ~パートⅣまでシリーズ化され、バブルに突き進む昭和から携帯電話の普及し始めた平成初期までの世相が一望できます。
1983年から1997年までの長きにわたり放映された TBS の人気ドラマ。
学歴が恋愛や進路に暗い影を落としながらも、それを懸命に乗り越えようとする若者の姿を描いた作品。放映当時大学生のテレビ離れが叫ばれていたため、大学生の現実をテーマにしようという話になり、1980年代の大学の大衆化に伴って社会問題となっていた学歴差別を背景にして作られた。パートII以降は、個々の登場人物の成長に重点が置かれている。(wikipedia)
ドラマ全般にわたって使われているサザンオールスターズの数々の楽曲がより一層ドラマを引き立てている。
主要キャスト
仲手川 良雄(中井貴一)
岩田 健一(時任三郎)
水野 陽子(手塚理美)
宮本(門脇) 晴江(石原真理子)
西寺 実(柳沢慎吾)
谷本(西寺) 綾子(中島唱子)
伊吹(本田) 夏恵(高橋ひとみ)
本田 修一(国広富之)
ふぞろいの林檎たち パートⅠ
- 第1話「学校どこですか」
- 第2話「恋人がいますか」
- 第3話「生き生きしてますか」
- 第4話「何を求めてますか」
- 第5話「親友は誰ですか」
- 第6話「キスしてますか」
- 第7話「どんな夢見てますか」
- 第8話「どんな夢見てますか」
- 第9話「ひとの心が見えますか」
- 第10話「胸をはっていますか」
四流大学に通う仲手川、岩田、実は合コンで、看護学校の晴江、陽子、そして有名女子大に通う綾子と知り合いになった。
同時期、仲手川はふと立ち寄った風俗店でアルバイトをする夏恵に出会った。夏恵に惹かれる仲手川だが、彼女が本田といびつな同棲関係にあることを何かにつけ気に掛ける。
学生時代の終盤、青春を懸命に謳歌しようとする彼らだが学歴重視の風潮は彼らにとって厳しい向かい風となっていた。
「定員割れの工業高校から定員割れの国際工業大学へ入ってよ、学校名を言うと察した周りは取り繕うような態度をとる・・・。アホの代表みたいに思われてんだぞ。」と講義中に岩田にこぼす実。
この3人が通う大学は世間から4流大学と揶揄され、また工学部でもあるため女子学生の数も少なく青春を謳歌し切れていない不満をいつも抱えていた。
天井からぶら下がる厚みのある CRT ディスプレイが時代を感じさせる。
当時の合コン風景。(合コン:男女合同コンパ、男女が出会い親密になるイベントでお見合いよりも気楽な物。)
仲手川、岩田、実の3人は所属するワンゲル愛好会「オリーブ」主催という形で憧れの女子大に合コン募集のビラを配り、集まった晴江、陽子、綾子の6人で合コンを開いた。
舞い上がる仲手川、岩田、実だが、晴江と陽子は自分たちが看護学生であることを隠して参加していた。この後、6人で当時定番のディスコに踊りに繰り出した。この時期、都内ではまだジュリアナ東京の様な巨大ディスコへの一極集中ではなく小規模な施設が点在していた。
駒沢公園の喫茶店で待ち合わせをすると 看護学校の制服を着た晴江と陽子が現れた。
二人は合コンの時に嘘をついた理由を話し出した。
「看護学校の生徒だって言うと4年生の大学に行っている女性より2、3段低いみたいに扱う人がいる。 頭くるから御茶ノ水とか 東京女子大 とか言ってからかってやろうよ って思ったの。」
岩田たちと同じように晴江と陽子も学歴重視の社会風潮に嫌気がさしていた。
たまたま入ったマッサージ店の綾子に惹かれ、連絡先を交換した仲手川。
綾子の自宅に招かれた仲手川。年には不釣り合いな高級マンションに驚かされ、さらに本田と同棲していることを知りショックを受ける。
いきなり仲手川にキスをする綾子とそれを見ても動じない本田。本田と綾子の関係は世間一般のカップルとはかけ離れたものであった。それに不満を持つ綾子は本田に何かしらの反応を期待するが学歴の上層に生きてきた本田は自分の感情を表に出すことがうまくできず静かに水割りを傾けるだけだった。
今見ると平凡で小汚い一室に見えますが、当時は1部屋でこれだけの広さを確保できるマンションはそんなに多くありませんでした。
同じ工学部の1年後輩である佐竹(水上功治)とその仲間(谷村好一 ・布施博、なお、布施博は後のパートⅡ以降では売れ始めたせいか仲間のちょい役からは外れている。) から何かとちょっかいを出される実。
背が低く気弱でお調子者だったせいか学内で会うたびにからかわれていた。また、一緒にいた綾子もその容姿のせいでブスだ何だとからかわれてしまう。
佐竹たち3人組とはパートⅡ以降も何かと縁があるのでした。
バイト先の同僚に借りた車で陽子とデートする岩田。海辺や公園、オシャレなレストランで初めてのデートを楽しむ二人。
帰り道で、看護実習先でセクハラな患者への対応に防犯ブザーを持っていることを岩田に言うが、紐を引いた音の大きさにびっくりした岩田は畑に突っ込んでしまう。
売り言葉に買い言葉で喧嘩を始めてしまう二人。
この後も付き合っていく2人だが、互いに勝ち気な性格ゆえ同じようなぶつかり合いを繰り返すこととなる。
この時代はフェンダーミラーの車が一般的なものでした。
「私と2人で歩こうなんて人いなかった。呼び出してくれて一緒にお茶飲んでくれて嬉しいわ。」
「俺もどっちかって言うと2枚目 って顔じゃないだろ。 だからあんまり気取ってもいられないしな。みんなといるとつい 3枚目引っ掛けて笑いもんになっちゃったりよ。 」
見栄を張ることなく言いづらい過去をさらけ出す2人。実と綾子の距離は段々と近づいていく。
深夜警備のバイト中の岩田は、明かりがもれる部屋で土屋部長が窓を開けてるところに出くわした。
今にも身を乗り出さんとする土屋部長にお茶を出し世間話をして落ち着かせた。
これをきっかけとして、一流企業三友商事の部長職の土屋は岩田を気に入り、半ば強引に入社させようと役員たちに働きかける。
岩田が三友商事に内定したことを喜び、下宿に息子の顔を見に訪れた岩田の母。
兄弟の中で一人だけ出来の悪い岩田のことを疎んでいた 父と母であったが、息子の一流企業内定を聞き今までとは打って変わったように喜ぶ。
当時の大学生の平均的な下宿風景。 四畳半一間でその中に全ての家具が詰め込まれ、トイレは廊下にあり共同使用、汲み取り式もまだまだ健在でした。
一足先にカップルとなった岩田と陽子を横目に、少なからず互いを意識し始めた仲手川と晴江だが、なかなか先に踏み込めない。
中手川が何かにつけ綾子を気にしていることに、もやもやとした感情を抱く晴江。
素直な気持ちを伝えられず感情的になってしまう。
そんな春江の心の内を全く察することのできない中手川は、意図せず発する言葉が全て裏目に出て晴江の心を逆撫でてしまう。
大学ではお調子者の実だが、家では内弁慶でそんな息子とそりの合わない実の父・泰治(石井均)。しっかりした大人になってほしいと思いつつ日々ぶつかり合いになってしまう。
母・知子(吉行和子)はそんな実が可愛いのか中学の時からずっと甘やかしてしまい、実が社会人になってからもそれは変わらなかった。
酒屋を営んでいる仲手川の実家に学生運動のメンバーが配達の注文に訪れる。
学生運動の集会所にビール類を運んで欲しいと言われ、仲手川、岩田、実の3人はライトバンで現場に向かった。
学生運動は、1970年頃を境に社会が豊かになるとともに運動自体が衰退していったのでドラマの内容と社会情勢と若干のずれがある。
仲手川は酒屋(仲屋商店)の次男で、ドラマでもここは多用されているうちの1つ。
1980年代前半までは街のそこら中にこの手の酒屋が散見され、駄菓子を併売するところもあった。アーケードゲームを置いているところでは小中学生のたまり場となっていた。
後に、このタイプの店舗の多くがコンビニとなっていた。
仲手川の兄・耕一(小林薫)の妻・幸子(根岸季衣)は心臓の病で子供を諦めなければならず、姑の愛子(佐々木すみ江)から疎まれている。
愛子は耕一と幸子を別れさせようと画策し、知り合いの家の娘・邦子(千野弘美) を家政婦として迎え入れ、耕一とくっつけてしまおうと躍起にになる。
木製にガラス張りの食器棚、ちゃぶ台とその上のテーブルクロス、湯のみや湯のみ茶碗、もちろん正座。昭和の典型的なお茶の間風景。
最終話の一番最後の部分で3人揃って会社説明会に臨む場面。
多くの学生が控え室に集まる中、人事担当者が、
「大変申し訳にくいのですが、当方の手違いで今から控え室を2つに分けさせていただきます。これから申し上げる大学の方は別室の方に行っていただきます。その他の大学の方はこのままで結構です。別室へ移動していただく大学を申し上げます。東京大学の方、一橋大学の方、慶応の経済の方、早稲田の政経の方、東工大の方、以上です。」
と、あからさまに学歴で控室を分ける指示をした。
このドラマでは最後まで学歴差別をすがすがしいまでの表現で扱っています。今でこそ、この様なことが世間に知れれば大ブーイングとなりますが、当時はまあ頑張らなかったのだからしょうがないよね、というような風潮でした。
ワンゲル愛好会と名乗りつつ活動が見れるのは第1話だけでしかも登ったのはケーブルカーを利用した高尾山のみで名ばかりの集まりだったようです。
パートⅠを見ているとよくわかるのですが、街中にコンビニが一切出てきません。まだそんなにコンビニが広まっていない時代だったのです。その代わりに小さな商店が数多く出てきます。
ふぞろいの林檎たち パートⅡ
- 第1話「会社どこですか?」
- 第2話「空を見ることありますか?」
- 第3話「転職考えますか?」
- 第4話「日曜日に誰と逢いますか?」
- 第5話「友達と続いていますか?」
- 第6話「愛ってなんですか?」
- 第7話「大人の世界を見ましたか?」
- 第8話「そこは迷路じゃないですか?」
- 第9話「まわりに悲劇がありますか?」
- 第10話「星座はなんですか?」
- 第11話「熱い関係ありますか?」
- 第12話「本当はなにを求めてますか?」
- 第13話「燃え上がるものありますか?」
大学を卒業し、社会人となったばかりの仲手川、岩田、実。
岩田と実は工作機器を扱う商社に、仲手川は運送会社に就職する。入ったばかりの会社で慣れない仕事に翻弄され、時に社会の理不尽な洗礼を浴びつつ成長してゆく3人。
そして、会う機会がめっきり少なくなった8人の久しぶりの顔合わせは実の父の葬式であった。
お互いに向かって大声で挨拶をする光景は当時の名物である宿泊型の新人研修。
大企業であれば自社所有の研修所で新人研修を行っていますたが、中小企業は新人研修を専門に扱う会社に依頼し、新入社員を派遣しての合同新人研修を行っていました。
当時の新人研修は論理的なものでは全くなく、まさに根性論の世界でした。同じ会社に入った岩田と実はこの後、昼夜を問わない軍隊教育のような数日間の研修をどうにか乗り越えるのでした。
皆自分たちのことで忙しく、久々に全員が顔を揃えた場が皮肉にも実の父の葬儀の時となった。
前日に父親にひどいことを言ってしまい、そのままの別れとなってしまった実は現実が受け止められず喪主にもかかわらず散歩に出かけてしまう。
そんな実を追いかける岩田。
「 いいかお前は喪主なんだぞ。お前がちゃんとやらなくて一体誰がやるんだよ。ちゃんとお棺の側に座って、来た人に礼を言うのがお前の役目だろ。俺が代わってやるわけにいかないだろ。・・・もう学生じゃねえんだよ。」
第1話のこの最後のセリフが彼らに待ち受ける社会の荒波を予感させるのでした。
運送会社に就職した仲手川のもとを看護婦(現在では看護師)となった晴江が訪れる。
会社近くの食堂で待ち合わせたところにタイミングを合わせたかのように上司の相馬課長(室田日出男)が現れ、場の空気を察することなく二人の会話を遮るように喋りまくる。堪りかねた晴江は罵詈雑言を吐き捨て、その場を立ち去ってしまう。
悪気のない相馬だが春江にとっては我慢ならず、この後も何かとぶつかってしまう。
岩田と実は工作機器を扱う商社に入社し営業マンとして実績を上げること強いられるようになる。
要領のいい磐田は着実に結果を出していくが、実は岩田の半分の成績で部長の浜野(石田弦太郎)から小言を言われる日々が続く。
そんな実を経理の華江(畠山明子)が何かと励ますが、ある日、実の会社を訪れた綾子と鉢合わせし三角関係となる。華江は実と綾子の関係を知りつつも、実に頼られついつい優しくフォローしてしまう。
夫が亡くなってからずっとラーメン店「金華」を閉めていた知子だったが、同じく ラーメン店を営んでいた平野(小林稔侍)が働きたいと現れ店を再開することを決める。
平野には自店の火の不始末で妻と子供を亡くしてしまった悲しい過去があった。
生真面目で無口な平野に知子は好意を抱くようになっていった。
自宅のラーメン屋で平野が働くことが決まり開店の準備を始めるが、仕事から帰ってきた実は全く手伝いをせず、それを諌める綾子。
「下に行って平野さんにご苦労様と気持ちよく行って、後片付けを一緒にやるくらい大人になってもらいたいと思います。」
と、綾子にやり込められる実。
この頃からちょくちょく実の実家のラーメン屋を手伝うようになった綾子。いつも親身になってくれる綾子に実の方もまんざらではない様子。
岩田が何度も足を運びやっと開拓した新規顧客の工場の正宮課長が発注したモーターを横領していたことが発覚する。
大和田社長(近藤準)と浜野部長(石田弦太郎)は、金銭のやり繰りに苦労している正宮(岡本信人)に代金は支払わなくて構わないことと、見返りとして今後の取引の確約を取り付けた。
仲手川の兄・耕一(小林薫)が絵画教室に通うようになってから様子がおかしくなったことを母・愛子(佐々木すみ江)と妻・幸子(根岸季衣)が気づく。
浮気の相手は耕一の高校の同級生で、かつて振られた相手であった。幸子の病気のこともあり愛子とはあまり相性が良くなかったが、この時ばかりは妊娠したばかりの幸子のことを思いやり、耕一に態度をはっきりするようにと詰め寄る愛子であった。
耕一が相手とはっきり別れれば何にも言わないという幸子。子供ができた幸子は危険な出産となるが産む覚悟をしていた。
喫茶店で耕一が仲手川に浮気相手のことを打ち明けた場面で、
「向こうは 4年生の大学に行っていて、 こっちは高校だけ。店継いたからな。ちょっと、叶わねえような感じがあって・・・・。」
というのがありました。ここでも学歴格差が纏いつく世相であったことを物語っています。
いつもは相手の気持ちを察することのできない少々にぶい仲手川と素直に自分の気持ちを言い表せない晴江。
この時は晴江の行動がどうにも気にかかり、会社を休み晴江のアパートに会いに行く。そんな仲手川に、本当は無性に会いたかった、来てくれて本当に嬉しいと素直に自分の気持ちを吐露する晴江。
いつも意地を張ってばかりの2人が本音をさらけ出す数少ない場面。
出社前に突然磐田のアパートを訪れる浜野部長(石田弦太郎)。
同業界最大手から引き抜きの話が来ていることを打ち明け、今いる会社からは6人連れて行く、その中の一人が岩田で寺西(実)は連れて行かないと厳しい口調で岩田を見る浜野部長。
「一緒に入社した寺西(実)には寸前まで黙っていて突然君がいいところに行ってしまう。奴にはショックだろう。そのあたりの覚悟をしておいてくれ。」
「小さな会社に入ったやつはこういうチャンスを掴まなければ人生変わっていかないよ。」
黙り込む岩田だがこの後なんとか実の成績を上げ一緒に連れて行こうと奮闘する。
岩田らの大学の後輩・佐竹(水上功治)は従業員500人を抱える佐竹工業の御曹司で、卒業後に父親のコネで佐竹工業に取締役見習いとして入社する。
実の業績を上げて同業他社へ移籍するメンバーにいれるために岩田は躍起になり、佐竹工業の後輩佐竹を頼ることを実に進める。
挨拶に訪れた2人に向かって佐竹は、
「学校で先輩のあんたらとやり合ったのはちょっとは俺の自慢だった。ところがその先輩が簡単に頭を下げるやつだったとはな。」
と怒鳴り散らすが、その後、寂しく来いよといい資材化への顔つなぎをしてくれるのだった。
帰社するといつもと雰囲気の違う社内。
社長の大和田(近藤準)に 営業報告をしようとすると、その件は後は西寺にやらせるよ、辞める者に頼むわけにもいかないだろ、と言われる。
浜野部長が会社を移ることについて大和田社長に報告したのであった。
岩田が世話になった会社と袂を分かつ時が近づいていた。
本田の呼びかけで城ヶ島のビーチに集まる 8人。 紆余曲折あった本田と綾子の結婚の報告であった。
最終話の最後の場面にあった和やかな雰囲気です。
もうすぐバブル到来という時代、街は活気をおびていますが画面の中の街並みや家電製品はまだ旧世代のものです。タクシーの初乗りもまだ470円。 昭和の集大成と言った頃のお話でした。
ふぞろいの林檎たち パートⅢ
- 第1話「旧友と逢いますか?」
- 第2話「人は変わると思いますか?」
- 第3話「昔の方がいいですか?」
- 第4話「大人の実感ありますか?」
- 第5話「チャンスを掴みましたか?」
- 第6話「キツイ体験ありますか?」
- 第7話「遠くへ行く人いませんか?」
- 第8話「この頃泣くことありますか?」
- 第9話「いくつの人生見ましたか?」
- 第10話「季節を忘れていませんか?」
- 第11話「出直す元気がありますか?」
不動産会社を経営する門脇と結婚し、金銭的には何の苦労もない晴江だったがその仲はあまり良いものとは言えず、舌を噛んで自殺の真似をする。
病院に運ばれた晴江を心配し、かつての仲間がまた集まるようになる。
晴江が舌を噛んで自殺未遂をし、病院に運ばれるも大したことがないと分かり胸を撫で下ろす岩田と中手川と実。
その足で陽子のアパートに転がり込むと、察した綾子も子供を連れて訪れるのであった。(パートⅢでは実と綾子はすでに結婚し子供も生まれている。)
昔のことを懐かしんだり、中堅社員としてそれなりの役割を任せられているなど、話はいつまでも尽きない。
「久しぶりに会ったんだ、これからみんなで海を見に行かないか?いや温泉に行かないか?」
一人だけ乗り気な磐田。岩田もすでに妻帯者で子供もいる身ではあったが、この会話に現実逃避したいという気持ちが見え隠れしている。
今にも温泉に行くような話をしつつ、このあと何事もなかったかのように解散していった。
陽子のアパートから帰り、子供を寝かしつけ、一服する実と綾子。
「父ちゃん、結局一番うちが幸せね。岩田さんところもあんまりうまくいってないみたいだし、陽子さんも仲手川さんも独身だし、晴江さんは自殺騒ぎだし。」
と幸せを噛みしめる綾子。
なんだかんだとこの夫婦が一番小さな幸せを積み重ねているのでした。
綾子のセリフの中で、「仕事もまあまあ景気いいし。」とありますが、この時期はバブル真っ只中、働けば働くほどその頑張りが戻ってくる良い時代でした。
仲手川は同じ会社で係長となり部下もでき、パート・アルバイトの従業員たちのマネジメントに日々奔走している。
ここでは部下の丸山(瀬戸陽一朗)に指示し、外国人のパート・アルバイト従業員に配送担当エリアの名前を覚えさせていた。
脱走した晴江を仲手川の実家、実の実家と探し追いかけてくる夫の門脇(柄本明)。
「出てきてくれよぉ! 春江よぉ!」と実の実家のラーメン屋の2階まで追いかけて来て叫ぶ門脇に観念し、隠れていたイレから出てくる晴江。
仕事の合間に門脇邸を訪れた実はあまりの大豪邸にテンションが上がりまくる。
見合いの話が持ち上がっている仲手川の心を掻き乱すのはもうやめた方がいいと伝える実に、分かってる、もう迷惑をかけないと言うつもりで仲手川のアパートに行ったと言う春江。
ついつい長話をしていると、夫の門脇が現れそろそろ帰ってくれと告げられる。
年長者の前に立つと、どうも背筋が伸びてしまうのは実の性格。社会人になってもおどおどとした性格は治らないようだ。
偶然、街で再会する実と佐竹。かつてのチャランポランな風体ではなく、ビシッとスーツを着こなす佐竹。
佐竹は突然亡くなった父親の会社を継ぎ、社長として奔走するが業績不審に喘いでいると実に漏らす。
「先輩のこと、何度もここのところ思い出してね。後輩のこの嫌な野郎の所に手をついて取引させてくれって・・・。あそこまで一生懸命に取引先を広げようなんてやつはいませんよ・・・。人材が欲しいよ、先輩。」
うちの営業部長になってくれないかと懇願される実。
退職を決めた実は経理の華江(畠山明子)に世話になった気持ちを込めて、そして少しの下心を抱え料亭にてもてなす。
自分を誘ってくれた佐竹工業への転職を決めたことを 華江に打ち明け、華江もそのことを喜ぶ。
「で、私に何して貰いたい?」と実の心の内を見透かす 華江。
「いいわよ、後腐れなく遊ぼう。」
予想もしていなかった華江の反応にそのまま最後まで突き進む二人。
別れ際のタクシーの中のセリフはまるで古いイタリア映画の様な滑稽さ。
とある会社の創業100年のパーティーに合わせ、その前日に九谷焼の鉢 5000個を届ける仕事の以来が来た。
その日は既に別の会社の積荷で大半のトラックが出埋まっていたが、どうにかできると発送業務を請け負ってしまった仲手川。
実家の酒屋の兄や友人に頼み込んだり下請けの配送会社などを探し当て、どうにか 5000個を配送する目処がついたかのように思えたのだが・・・。
仕事に穴を開けて頭を冷やせと課長に怒鳴られ、放心状態でアパートに帰る仲手川。
新しい会社で部長職というプレッシャーで切羽詰まった実に八つ当たりされ、顔に痣をつけたままフラフラと仲手川のアパートを訪れる綾子。
ボロボロに見える仲手川は綾子にすがり付き、それを静かに抱きしめる綾子。
一晩濃密な時間を過ごした二人は全てを胸の内にしまい何事もなかったように自分たちの生活に戻っていった。
仕事ばかりに打ち込む岩田はいつしか妻の気持ちが分からなくなり、わからなくなっていることすら気づかずに時が流れ、気がつけば妻との間には修復のできない溝が生まれていた。
実家に戻っていた妻が娘を迎えに来たが、もはや玄関をまたぐことすら嫌悪感でできなくなっている状態であった。
顔を合わせば 何度でも ぶつかり合うとお互いに分かっているようであった。
突然の取締役会に出席を求められる社長の佐竹は、役員たちの要求が分かっていたので当てつけに実を連れてゆく。
会議では、もう二代目社長の佐竹を支えきれないと告げられ佐竹の隠居が決定的になる。
父親から譲り受けた会社を少しでも大きくしたいという思いとは裏腹に傾く業績と離れてゆく番頭役員たち。そんな番頭たちへの足掻きとして、実を営業部長に引っ張ってきたと告げられ逆上する実。
久しぶりの佐竹との喧嘩も学生時代の華々しさは無くなっていた。
弘前に新しくできる病院が人を集めており、循環器系の婦長(現在は師長) の席を用意するという打診を受け、青森に移動した陽子。
まだ準備中の真新しい病院のナースセンターで、同じく 引き抜きによって集められた看護婦たちと昼食をとる陽子。人員が全く集まらず、設備もまだ整っておらず、本当にこの病院が開けるのかどうか冗談を言い合いながら昼食をとる 3人。
ただこの先、この冗談が現実のものになろうとは思いもしない陽子であった。
晴江のことを心配し集まる仲手川、岩田、実、夏恵。
そこに晴江の旦那・門脇が訪れ、女房の友達は亭主の友達と言って、お昼をご馳走しようと中華料理店に彼らを招いた。
乾杯後、急に眠気に襲われ気がつくと門脇、仲手川、岩田、実の男4人だけ、睡眠薬を入れられていたのであった。
場所を変えて飲み直そうという門脇だが、用意されたカラオケルームにはコンパニオンがずらりと揃い、現在では絶対に放送禁止となるような場面が展開された。
平成初期のテレビ業界の倫理観が見て取れる場面。
晴江のことを諦め見合いをしようと決めた中手川は、姉の幸子に良い人を紹介してくれるように頼み、何度か相談をするようになった。
そんなある日、二人で入ったお好み焼き屋だったが突然外に出て行く幸子。
銭湯帰りの中村(仁科扶紀)に声をかけた幸子は一緒にお好み焼きを食べないかと誘い、初対面の中村も断りもせず一緒にお好み焼きを食べる流れとなった。
これ以降、仲手川に付きまとうようになる中村・・・。
羽田空港ロビーで出発直前の晴江を摑まえる仲手川に、贅沢な生活や何もかも捨てて誰もいない外国に行って、一人で自分を見つめ直すと固い心内を話す春江。
行先は決まっていないお金も大して持っていない、いろんなものを捨てないといろんなものに気が散って、ちっとも自分自身になれなくてと、見送る中手川に振り返りもせずエスカレーターの先に消えて行った晴江。
不本意に会社を辞めることになった実と正式に離婚の決まった岩田がしんみりと飲み始めていると、料理を平野 が届けに来た。
男だけで飲むのもいいもんだなぁ、飲み始めた平野がしんみりと呟く。
しばらくすると3人とも出来上がり、大声で歌い踊り、近所の住人がアパートのドアを叩いて苦情を言いに来ている声さえ聞こえない状態となる。
ドラマ序盤は昔を懐かしむ回想シーンがモノクロで多様され、過去の視聴率にすがるような感があります。
まだ街中には公衆電話がいたるところに設置されていました。
オープニングのタイトル画像のバックで東京都庁が映るようになりました。街並みも少しずつ洗練されていくようです。
ふぞろいの林檎たち パートⅣ
- 第1話「ほんとの顔が見えますか?」
- 第2話「誰に関心ありますか?」
- 第3話「なに見て熱くなりますか?」
- 第4話「格好がいいのは誰ですか?」
- 第5話「心の話ができますか?」
- 第6話「あなたの正義はなんですか?」
- 第7話「そっちの道でいいですか?」
- 第8話「近くに闇がありますか?」
- 第9話「分かってないのは誰ですか?」
- 第10話「暴れたことがありますか?」
- 第11話「帰るところがありますか?」
- 第12話「忘れていることないですか?」
- 第13話「どんな明日が見えますか?」
泊まる場所がなく工事中のビルで一夜を明かそうとした桐生は、都議会議員・遠山隆夫と暴力団の癒着の現場に出くわしてしまう。
遠山の娘・美保は、父の後ろめたい部分を聞き出そうと桐生に近づく。
田舎から出てきた桐生の引っ越し荷物を依頼された仲手川だったが、ドライバー共々荷物が消えてしまった。
荷物を必死に探す仲手川であったが、桐生と何度か会っていくうちに、深夜の工事中のビルで起こった出来事を相談され、林檎たちがまた集まるようになる。
田舎から出てきた桐生(長瀬智也)は上野駅で友人と待ち合わせをしている時に赤の他人の服部夫妻(矢崎滋・神保共子)に声をかけられる。
服部はパワハラを受けた会社の上司を殴りに行くから手助けをして欲しいと桐生に頼むが、上司と服部の話を聞いているうちに感情が込み上げた桐生が服部の代わりに上司を殴ってしまう。
田舎から東京に出てきたばかりの桐生は、住むあてもなく工事中のビルで一夜を明かそうとする。ところが運悪く、都議会議員の遠山(中山仁)と裏の関係のある暴力団がそこに現れる。
話を聞かれたと勘違いした遠山は、30万ほど桐生に握らせこのことを話せば命はないと脅す。
遠山美保(中谷美紀)は、あの夜の工事中のビルで桐生が都議会議員の父と暴力団が何をしていたのか知っていると思い、そのことを聞き出すために桐生のアパートを訪れる。
何も知らないと言い張る桐生に、話してくれるまでずっとここにいると言ってしばらく同居することになる遠山美保。
桐生は遠山美保のことを暴力団の一味と勘違いしビクビクしていたが、後に全く関係がないことを知る。
桐生の引っ越し荷物を個人的に請け負った仲手川であったが、配送トラックのドライバーとの連絡がつかなくなってしまう。
事情を説明するために桐生のアパートに出向き状況を説明する仲手川だが、仲手川自身もその後しばらく連絡がつかなくなってしまう。
父の暗い部分を薄々感づいている美保はその疑念を父にぶつけた。
政治家としてやましいことは何一つない、一緒に家に帰ろうと寄り添う遠山隆夫であったが美保はそれを振り切った。いつもと違う父のそぶりに疑念を拭いきれぬまま美保は去って行った。
仲手川に連絡がつかなくなったことを心配し旧友達が桐生のアパートに集る。
桐生の荷物を預かったドライバーとともに仲手川も所在不明となり、仲手川の会社や警察に連絡をすべきだと言い張る桐生と遠山美保。
やつは悪いことをするような人間ではないと、仲手川のことを庇う旧友たちだが、当の本人が見つからないことでお手上げ状態となる。
仲屋商店にもコンビニチェーン本部よりフランチャイズ 契約をしないかという営業が来るようになった。
エリア営業の桜井(松澤一之)に母・愛子は、コンビニにする気など毛頭ない、この近所にお酒を扱える店はないからコンビニができたって困らないと強気だったが、 櫻井のマシンガンのような営業トークでこのままでは純益がどんどん減っていくと指摘されると途端に顔色が悪くなるのであった。
この時代はすでにコンビニが乱立し始めているのでこれからコンビニにするお店は大変だったでしょう。
弘前の病院の一件の後、東京に舞い戻り順調にキャリアを重ね婦長となった陽子と、自らももう先が長くないと分かっている末期患者の佐藤(北見敏之)。
新米の看護婦に無理難題を言って困らせて泣かせ、ナースセンターでは悪い話題しか出ない佐藤であったが、涼しい顔で佐藤を扱う陽子に病気のせいもあったのか恋心を抱く。
陽子もまた、そんな弱々しい佐藤に惹かれて引かれていった。
1997年はまだ師長ではなく婦長と呼んでいたようです。
ライバル会社の相崎江里(洞口依子)に大口の仕事をこっそり奪われ不調の岩田。
相崎は磐田の営業力を高く買っており、自分の会社に引き抜こうとする。だが実際にはそれだけではなく、相崎特有の感情が心の奥に芽生えていたのだった。
懐かしい面々が一堂に会し、そこに桐生が加わった。
アルコールも入り陽気に歌い始めるメンバーだが、今回 集まったのはアメリカから来たハガキに書いてある晴江の近況報告と、もう1つは桐生と遠山美保が抱える重い内容について話し合うことが目的であった。
工事中のビルで鉢合わせした遠山美保の父親・遠山隆夫と暴力団の関係と、なぜ遠山隆夫は桐生に30万余りの金を渡して何も言うなと言ったのか。
社会人となり年を重ねた林檎たちは、口を揃えて首を突っ込んだり深く詮索してはいけない世界の話しだと言うばかりで、桐生は不満げにカラオケルームを後にした。
体調が優れないという愛子のことを気遣う知子は、院長が顔見知りの病院を紹介し、自分も愛子に付き添って行った。結果、胃がんということが分かり我がことのように心を痛める知子。
岩田を通して知り合った仲手川と相崎。
とんとん拍子で話が進み婚約することとなった仲手川と相崎。そのことを報告に、母親の愛子のもとに訪れる相崎。
愛子はまだこの時、自分が胃がんだということを知らされておらず病床から仲手川と相崎を出迎える。
2人が帰った後、困ったわね、良雄、あんな女じゃ幸せになれないよ・・・とポツリと呟く愛子であった。
離婚した妻が引き取った 娘・宮子(山岸里紗)と久しぶりに同じ時間を過ごす岩田。
親子仲良く夕食を作っていたが、不意に宮子の顔が曇り 夕食はいらない、外に行くと言い出す。突然の宮子の態度にわけがわからず戸惑うばかりの岩田。
何もかも捨てると言ってアメリカ・ロスへ渡った晴江が6年ぶりに日本に帰ってきた。
愛子のことを聞き、病床を訪れ他愛もない会話をしばし続ける。仲手川家で初めて2人が会話をした時とは全く異なる穏やかな雰囲気が流れるが、やがて意を決した晴江が語り出す。
みんなで本当のこと言わずに胡麻化しているのは良くない、本当は軽い病気ではない、陽子がベッドを用意したのはそれだけの理由があること、包み隠さず愛子に打ち明けた晴江。
シリーズ中ただ一人結婚の話の無かった仲手川がここでようやく結婚することとなった。
実の自宅のラーメン屋を貸切にしてお疲れ様会を始める最中、みんなが揃うことは滅多にないからということで仲手川が結婚の話を切り出した。
相手は隣席の相崎江里で、秋には式を挙げると発表した。
パートⅠからパートⅢまでは主役級はドラマ 初めからの8人で固定されていましたが、時代が移りこの8人だけでは若年層の視聴率を取り込むことができないと判断したためか、長瀬智也と中谷美紀が準主役のような位置づけで登場します。
参考/関連
では、また~